横浜地方裁判所 昭和37年(ワ)1008号 判決 1963年11月13日
原告 高川儀夫 外二名
被告 株式会社寿屋百貨店 外一名
主文
被告両名は、各自、原告高川儀夫に対して五拾四万六千五百六拾円、同高川真知子および同高川博史に対してそれぞれ金五拾弐万七千弐百四拾四円ならびにこれらに対する昭和参拾七年壱月壱日以降完済まで年五分の金員の支払をせよ。
原告等の各請求中その余をいずれも棄却する。
訴訟費用はこれを三分し、その二を被告両名の負担として、その一を原告等の負担とする。
この判決は原告等勝訴の部分に限りかりに執行することができる。
事実
原告等訴訟代理人は、「被告両名は各自連帯して原告高川儀夫に対し金一、二八二、一一四円、原告高川真知子、同高川博史に対してそれぞれ金一、二〇六、〇〇〇円並びにこれらに対する昭和三七年一月一日以降完済まで年五分の金員の支払をせよ。訴訟費用は、被告両名の負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、
「(原被告等の身分および職業関係)
一 原告高川儀夫は訴外亡高川紀子の夫で写真業を営む者(病弱のため、事実上妻たりし右訴外人が手伝つていた。)であつて、原告高川真知子(昭和二一年九月二一日生)および同高川博史(昭和二三年八月二二日生)はそれぞれ原告と右訴外人間の長女及び長男である。被告株式会社寿屋百貨店(以下被告会社という。)は和洋服並びに和洋具、洋品雑貨、靴、自転車、時計カメラ等の販売を業とする資本金五〇〇万円の会社で、被告松本勝夫(以下被告松本という。)は店員として被告会社に雇われ同会社の太田支店に勤務し集金の業務に従事していたものである。
(本件不法行為)
二(一) 右訴外紀子は昭和三六年一二月二〇日午後四時四〇分頃、買物のため、太田市大字太田一一三番地先の伊勢崎市方面より館林市方面に東西に通ずる巾員約八・三米の県道(通称本町通り)において、右道路の北側花川靴店前より南側の大川呉服店に向つて横断しようとして一旦花川靴店前に停立安全を確かめ、更に一・四米進行して東方よりの車等に注意して安全を確かめて進行し道路の中心線をやや越えたとたん右道路を西方面から東方面へ進行中の被告松本の運転する被告会社所有の第二種原動機付自転車(太田市第一、八八五号ホンダスーパーカブ五五cc六一年式)に衝突されて路上に転倒し、頭蓋底骨折、脳挫傷の傷害を受け、右傷害により同年同月二二日午前一二時頃、太田市大字大島太田病院に於て死亡した。
(二) ところで、訴外紀子の右死亡は全く被告松本の過失に基くものである。即ち、同被告は前記道路を時速約四五粁ないし五〇粁以上の速力で進行中訴外紀子が前記道路の横断を開始しようとする位置より直線距離約三五・七米手前の地点に於て同人を認め、一旦時速三七、八粁余に速力を減じ前進したところ右訴外人が約一、四米前進して東方を向いて一旦停止したことを右位置より直線距離約一八、四米手前において認めたが、そのまま進行しても危険はないものと軽信し再び時速約四〇粁に増速して東進し、右訴外人停止地点より直線距離約八・五米に近づいた時同人が道路の南に向つて走り出したのを発見し、急ブレーキをかけ同時にハンドルを右に切つたが時すでにおそく自己の運転する車のハンドルの左側を右訴外人に衝突させて同人を路上に転倒させたものであるが、そもそも被告松本は原動機付自転車の運転業務に従事するものであり、右道路は制限時速四〇粁で両側は商店街で道幅も狭く年末も迫つて車輛や歩行者の往来も頻繁な個所であつたのであるから制限時速を遵守することは勿論、常に前方を注視し、あらゆる突発的若しくは不測の事態に即応して急停車等の措置を執り、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があつたにも拘らずこの義務を怠り、制限時速四〇粁を越える前記速度で漫然とその場を通過しようとしたため、前記事故を発生せしめたものであるから、民法第七〇九条に基き、又被告会社は被告松本の使用者であるから同被告がその業務執行中にした右不法行為につき民法第七一五条に定める使用者としてそれぞれ本件事故により訴外紀子及び原告等の蒙つた財産上及び精神上の損害を賠償すべき義務がある。
(本件不法行為による損害)
三(一) (消極的損害)
訴外紀子は、原告儀夫の妻であつて、大正九年一〇月二〇日出生、死亡当時満四一才二ヶ月の女子であり、生前は身体強健であつたから、昭和三六年総理府統計局第一二回「日本統計年鑑」(日本統計協会毎日新聞社発行)によると、日本女子平均生命七〇・二八才まで二八年間の平均余命を有し、同人は死亡当時、原告儀夫と共に写真業を営みその性格は精励格勤で、昭和三六年当時の年間営業収入金六五四、三八五円から税金其他の必要費四割を引いた純利益金三九〇、〇〇〇円(千円単位以下切捨)のうち半分以上が同人の稼ぎによるものであつたから少なくとも年間収得利益金一九五、〇〇〇円を得ていたのであつた。よつて右金額から同訴外人の生活費として年間七五、〇〇〇円(月額金六、〇〇〇円)を控除した年間一二三、〇〇〇円の取得を爾後二八年間得ることができたのであつて、これを基礎としてそれに右余命年数を乗じ、更にホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除するときは金二、一一八、〇〇〇円(端数切捨)が訴外紀子の財産上の損害として被告等に一時に請求しうる金額となる。そして、原告等は右訴外紀子の死亡によりその共同相続人としてその相続分に応じて当然に右損害賠償請求権を承継取得したのであるから、原告儀夫および同真知子、同博史はそれぞれ右損害賠償請求権の1/3の金七〇六、〇〇〇円の債権を被告等に対して取得したものである。
(二) 原告儀夫は昭和一八年北支に出征中肺結核にかかり召集解除後自宅療養の結果小康を得たが同二三年六月再発し、国立療養所大日向荘に入院、手術を受けて後自宅療養と入院治療を重ね最近ようやく家庭で療養しうる状態になつた。したがつて、その間同原告の妻たりし訴外亡紀子は事実上一家の主体となつてその生計を保ち精神的、経済的に原告等の円満な家庭の中心であつたため、訴外紀子の本件事故死により病弱の原告儀夫は暗夜に杖を失つたも同然であり、又、原告真知子及び同博史は共に未成年者であり親愛なる母を失つてその慈愛と保護を永久に受けることができなくなり、今後の教育と成長に計り知れない打撃を蒙り、いずれもその受けた精神的苦痛は筆舌に尽し難いものがある。(これが、かりに、同訴外人の不治の重患又は自からの過失による死亡であつたとしても、原告等としてはあきらめ切れないものがあるのであろうが、況んや本件事故による一瞬の惨事に基く惨死にあつては終生忘れることのできない悲しみである。)もとより、かかる精神的苦痛は金銭を以て代えがたいものであるが、その一端を金銭により賠償するとすれば、右の如き原告等の精神的損害に対する慰藉料はそれぞれ五〇〇、〇〇〇円が相当である。
(三) (葬儀関係の費用)
原告儀夫は訴外紀子の死亡により葬儀法要の費用として金七六、一一四円の支出を余儀なくされたのであるが、その出費内容は左記の通りである。
記
(イ) 野口葬祭具店支払 九、三三〇円
(ロ) 御布施料(長念寺) 六、〇〇〇円
(ハ) 焼場志 六〇〇円
(ニ) 火葬場使用料等 九〇〇円
(ホ) 墓地使用料(長念寺) 二〇、〇〇〇円
(ヘ) アルコール五〇〇瓦(上原薬局) 三二〇円
(ト) マスコツト人形(茂木玩具店) 一二〇円
(チ) 通信費、葉書二百八拾枚及び印刷費 一、六五〇円
(リ) 封筒代(光和堂) 五〇円
(ヌ) 電報代 五九四円
(ル) 仏茶追加等(野口園) 三、八〇〇円
(ヲ) 茶六〇個(野口茶店) 一二、〇〇〇円
(ワ) 丸信石油 三七〇円
(カ) たばこ、青果、缶詰、雑貨(山田屋食品店) 二、二六二円
(ヨ) 菓子類(集華堂) 五、六七〇円
(タ) お茶菓子(神岡商店) 三〇〇円
(レ) 酒、味噌、醤油(峯崎商店) 二、〇八八円
(ソ) (新井屋) 三五〇円
(ツ) 魚類(安) 三、二〇〇円
(ネ) 豆腐、油揚げ(大黒屋) 六二〇円
(ナ) うどん(金時バー) 二六〇円
(ラ) うどん一〇束(高田漬物店) 一、一六〇円
(ム) 米(岡山米店) 一八〇円
(ウ) すし(聖天すし) 一、八二〇円
(ヰ) そば(栄屋) 二、四七〇円
合計 七六、一一四円
(なお、入院治療費合計金三一、六八四円は被告会社において支払つてくれたので、この分は訴求しない。)
(結論)
四 よつて原告等は被告両名に対し同人等が各自連帯して原告儀夫に対しては前項の(一)相続債権金七〇六、〇〇〇円、同項(二)の慰藉料金五〇〇、〇〇〇円および同項の(三)葬式等の費用金七六、一一四円の合計金一、二八二、一一四円また、原告真知子、および同博史に対してはそれぞれ前項(一)の相続債権金七〇六、〇〇〇円および同項(二)の慰藉料金五〇〇、〇〇〇円の合計金一、二〇六、〇〇〇円を、いずれもこれらに対する本件不法行為発生の後である昭和三七年一月一日以降完済まで年五分の民事法定利率による遅延損害金を附加して支払うことを求めるため、この請求をする。」と陳述し、
被告等の主張に対して「本件被害者訴外亡紀子が横断した道路部分には横断歩道の標識のなかつたことは認めるが、その余の被告両名の主張はすべてこれを争う。」と述べた。(立証省略)
被告両名訴訟代理人は、「原告等の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、原告等の負担とする。」との判決を求め、答弁として、
「原告主張の請求原因中一の事実のうち原告等と訴外紀子との間の身分関係については、不知。その余は認める。二の事実の(一)は認める。同(二)の事実は争う。三の事実の(一)事実は否認する。同(二)及び(三)の事実は不知。四の事実は争う。」
と述べ、なお、「かりに被告松本に過失があり被告両名に損害賠償の義務があるとしても被害者である訴外紀子にも過失がある。即ち、車輛の交通の頻繁な交差点を横断する歩行者は左右前後の安全を確認し注意して横断しなければならず、又車の直前直後も横断してはならない義務があるにも拘らず訴外紀子は横断歩道の標識のない場所を何等左右の安全を確認することなく突如走り出して被告松本の運転する車の直前を横断しようとした過失によつて本件事故を発生させたのであるから、損害賠償額の算定について被害者の右過失は斟酌されるべきである。」と抗弁した。(立証省略)
理由
(原、被告等の身分および職業関係)
一「請求の原因一の事実。」は、「原告等と訴外紀子との間の身分関係。」をのぞき、当事者間に争いなく、「右除外部分。」は成立に争いのない甲第一号証ならびに証人江原七郎の証言および原告高川儀夫本人尋問の結果を綜合してこれを認めることができ、この認定を妨げる証拠はない。
(本件不法行為)
二「請求の原因二」中「(一)の事実。」は当事者間に争いがないが「(二)の主張。」は被告両名の争うところであるから、この点について案ずるに、いずれも成立に争いのない甲第二号証、同第三号証ノ一ないし四、同第四ないし一一各号証および同第一三、一四各号証ならびに証人深沢敬次郎および同亀山順次郎の各証言および原告高川儀夫、被告松本勝夫各本人尋問の結果を綜合し、右判示の事実に徴すれば、「原告等が被告松本の過失の基礎として主張する事実(ただし、当初の時速は四〇粁ないし四五粁。)。」のほか「本件事故発生時は年の瀬をひかえ、特に夕方であつて人通りが頻繁であつた。」事実を認めることができ、この認定に反する被告松本勝夫本人尋問の結果はたやすく措信できず、他に右認定を妨げる証拠はない。しかして、右事実関係の下において本件原動機付自転車の運転者たる被告松本は本件道路の中央線を基準として同人が現実に走行した部分より進行方向に向つてはるかに左寄りに運行し(道路交通法第十九条)、かつ、慎重に前方を注視しその進路を横断しようとする者がある場合はその者の挙動に応じていつでも直ちに急停車をなし得るよう充分減速すると共に適宜警音器を吹鳴して警告する等衝突による事故発生を未然に防止すべき有効適切にして周到なる注意を須いるべき義務があるにもかかわらず、同被告はかかる注意義務を怠り漫然前認定の道路部分を前示速度で進行したことによつて本件事故を惹起したものであるから、本件事故は同被告の過失に基くものと解すべく、したがつて同被告は訴外亡紀子および原告等に対し同人等がこうむつた財産上および精神上の損害を賠償する責に任ずべきである。そして、同被告は被告会社の被用者であつて同会社の業務の執行(集金)につき被告会社所有の本件原動機付自転車を運行して本件事故を惹起したものであることはすでに判示したところと被告松本勝夫本人尋問の結果とにより明らかである(反証はない。)から、被告会社も亦被告松本の使用者として同人の右不法行為に基いて生じた財産上および精神上の損害を右被告松本の場合と同様賠償する責に任ずべきものである。
(損害額)
三、よつて、進んでその損害の数額について案ずるに、
(消極的損害)
(一) すでに判示した一の事実のほか前顕江原証人の証言および原告高川儀夫本人尋問の結果を綜合すれば、「訴外紀子は昭和二一年九月二五日原告儀夫と婚姻し、夫婦の間に原告真知子および同博史の一男一女をもうけ病弱の夫の事業をたすけて子女を養育してきた、死亡当時満四一歳の健康な女子であつて、原告儀夫と共に写真業を営み、原告引用の統計資料その他現在の一般経験則に照らし、特段の事由なきかぎり、原告等主張のように余命なお、二八年を有し、そのうち稼働可能年数は一八年間と認めても敢て不都合でないと考えられる(最高裁昭和三一年(オ)第三六四号同三六年一月二四日第三小法廷判決、集第十五巻第一号三五頁以下参照。)ところ、死亡当時の右写真業による純収益はおよそ年間三九〇、〇〇〇円であつたがそのうちの半分は同女の稼ぎによるものであつて、したがつて同女の年間純収益はおおよそ金一九五、〇〇〇円であり、これから同人の年間生活費七五、〇〇〇円(月額金六、〇〇〇円)を差引いた金一二〇、〇〇〇円が同人の純益金であつた。」事実を認めることができ、この認定を妨げる証拠はない。そこで、右金一二〇、〇〇〇円の年間純収益と同女の残存稼働可能年数一八年を基準として本件事故により同女の蒙つた当時の損害額をホフマン式計算法に従つて算出すると合計一、三七七、一六八円となり、これが右訴外人において本件事故に因る死亡時に一時に請求しうる損害賠償額となる。
しかして、原告等は訴外紀子の死亡に因りその共同相続人としてそれぞれその相続分(1/3宛)に応じて当然自動的に被相続人たる同訴外人の取得した金銭債権たる右損害賠償債権を分割的に承継したものであつて(最高裁昭和二七年(オ)第一一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決、集第八巻第四号八二〇頁参照。)、その各金額は原告等各自金四五九、〇五六円となる。
(慰藉料)
(二) 成立に争いのない甲第一五号証ならびに証人江原七郎の証言および原告高川儀夫本人尋問の結果を綜合すれば「請求の原因三の(二)の事実」を認めることができ、この認定を妨げる証拠はなく、同事実によれば原告等がその配偶者又は慈母を失つたことによりそれぞれ大きな精神的苦痛をうけたことを認めうべく、この苦痛に対する慰藉料は、右認定の事実その他本件にあらわれた諸般の事情を斟酌して被害者の夫たりし原告儀夫に対しては金一五〇、〇〇〇円、被害者の子女であるその他の原告両名に対しては各金二〇〇、〇〇〇円を相当とする。
(葬儀関係の費用)
(三) いずれも成立に争いのない甲第一九号証、同第二八、二九各号証、証人江原七郎の証言および原告高川儀夫本人尋問の結果によりいずれも成立の真正を認める甲第一七、一八各号証、右原告本人尋問の結果と弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める甲第一六号証、同第二〇ないし第二七号証および同第三〇号証を綜合すれば「請求の原因三の(三)中(カ)、(レ)、(ラ)をのぞくその余の事実」と「右除外の(カ)、(レ)、(ラ)の各費目の支出はそれぞれ金一、七六二円、金一、五七八円および金二〇〇円である。」事実を認めることができ、この認定を妨げる証左はないから、結局原告儀夫の出捐にかかる本件事故による被害者訴外亡紀子の葬儀関係の費用は合計七四、一四四円となる。
(四) したがつて、原告等各自の蒙つた損害の賠償請求権数額は、以上(一)ないし(三)に判示した各金額の合計であつて、すなわち、(1)原告儀夫において合計金六八三、二〇〇円、(2)原告真知子において合計金六五九、〇五六円、(3)原告博史において合計金六五九、〇五六円となる。
(過失相殺)
四 しかるところ、本件交通事故の発生についてはその被害者訴外亡紀子にも過失があつたことを否定しえない。すなわち本件事故発生現場附近の当時の状況はすでに二において判示したとおりであつて、しかも横断歩道の標識のない場所であつた(この点は当事者間に争いがない。)のであるから、かかる状況の下においては、被害者は本件道路を横断するに当つては、附近に横断歩道があつたならそこまで迂回して横断すべく、もしこれなき場合には(この点は本件で明かでない。)特に終始慎重に道路の左右を注視し歩行の安全を十分に確認しつつ横断すべきであるのにかかわらず、これらの注意を怠りいささか軽率に本件道路を横断しようとしたのであつて、この点は被害者の過失と解さるべく、右過失が被告松本の過失と相まつて本件事故をひき起したものと認められるから訴外紀子の死亡によつて生じた原告等の前記各損害賠償債権額の算定についてこれを斟酌するを相当とすべきところ、その斟酌の度合は被告松本の過失の五分の一と認めるのが合理的であるから、結局、(一)原告儀夫の損害賠償債権額は金五四六、五六〇円、(二)原告真知子のそれは金五二七、二四四円(円未満切捨)、(三)原告博史のそれは金五二七、二四四円(同上)となる。
(結論)
されば、被告両名は各自原告儀夫に対して右金五四六、五六〇円を、同真知子および同博史に対してそれぞれ金五二七、二四四円を、本件不法行為に因り生じた損害の賠償として、いずれもこれらに対する本件不法行為の日の翌日たる昭和三六年一二月二一日以降完済まで年五分の民事法定利率による遅延損害金とともに支払うべき義務がある。(原告等は本訴において本件不法行為の日の後である昭和三七年一月一日以降完済までの右率による遅延損害金を訴求している。)
よつて、原告等の本訴各請求は右判示の限度内においてのみ正当としてこれを認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条、第九十二条本文、第九十三条第一項本文を、仮執行の宣言について同法第百九十六条第一項、第三項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 若尾元)